老師通信

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2020.10.10 Saturday

長寿と座禅〜〜インテリジェンスが長寿もたらす〜〜

 

長寿と座禅
〜〜インテリジェンスが長寿もたらす〜〜

丸川春潭

 昔から人生50年という言い方がありますが、統計的に見ると平均寿命が50年になるのは明治時代のことであり、江戸時代の平均寿命は35才くらいでした。世界的に時代と共に寿命は延びているのであります。
 一方、昔から禅僧は長寿であると云われてきています。
 中国8世紀の百丈和尚は84才、9世紀の雲門和尚は87才です。
 日本臨済宗最初の伝法師家、13世紀の大応国師は75才、江戸時代中期18世紀の白隠禅師は83才、明治の今北洪川禅師は76才、同じく明治の鈴木大拙は96才です。
 このように中国から日本にかけての歴史上有名な禅僧の幾人かはその時代では突出した長寿であったといえます。
 小生が19才から64才まで45年間師事した恩師人間禅第三世総裁磨甎庵白田劫石老師は93才の長寿でした。老師は若くして結核に罹り、肋骨を何本か切除され、早くから総入れ歯になり、またお年を召されてからはリュウマチや高血圧になられ、更に硬膜下出血で2回頭蓋骨に穴を空けられたりされ、体は生来弱いお方でした。
 血圧が高くなってからは、朝晩血圧を測られて綿密に記録されグラフにされていました。ことほど左様に自分の体の異変に常に聞き耳を立てられ、それを医者に逐一相談されて、即座に対策を打たれ続けられた結果の長寿であると思います。大正4年生まれのこの老師が92才まで師家として学人を厳しく指導されていたのを身近で拝見していて、つくづくと標題の「インテリジェンスが長寿もたらす」という言葉通りを実践されて我々に示されたとおもいます。
 学生時代は岡山道場で耕雲庵老師の侍者を4年間勤めさせて頂きましたが、その当時老師は胆嚢炎を患っておられ、定期的に胆汁を体外に排出されていました。そのやり方はゴムの管を口から飲み込んで胃から下の胆嚢まで届かせてそれを体外に排泄されているようでした。しかも医者を煩わせることなく、侍者の小生に管を入れる日は敷き布団を二枚重ねにすることを命じただけで、後は全てお一人でやられていました。後の澄徹庵月桂老師はその当時直日であり慈恵病院の医師でしたが、医者としてその所作の完璧さに感嘆されていました。明治26年生まれですが、84才の長寿です。
 耕雲庵英山老師も磨甎庵劫石老師も共通して云えますことは、日常的にご自分の健康については細心の注意をはらわれ、そして体が訴えるどんな些細な声にも耳を傾けておられました。健康時においても健康維持に良いと思われることは日課の中に何でも組み込まれていました。耕雲庵老師は必ず午睡と散歩をされておられ、晩酌は一合をゆっくり嗜まれておられました。
 磨甎庵老師も同じで、漢方医から、有酸素運動をすること、砂糖を摂取しないことや体重管理(人間の自然は豚型ではなくオオカミ型の痩身を旨とするべし)を学び徹底されていました。また身体の異常にいち早く気づいた後は即座にベストの対策を徹底してやられました。医者に掛かったときは、医者の言われることを忠実に即実践されました。
 お二人とも若いころはヘビースモーカーだったそうですが、医者から止めた方が良いと云われて即座に止められたそうです。(耕雲庵老師曰わく、煙草を止めるのは好きな酒を断つよりも大変苦しかった、と。)
 禅者が長寿であることの考察ですが、五欲七情は人間に具わった特徴ですが、人間形成を積んでない人は例外なく五欲七情を制御しようとしてもしばしばそれに引きずり回されて自分を傷つけ他人に迷惑をかけることが多いものです。五欲七情の本能に対するかくあるべきと云う知性との戦いを常にしているのです。
 これに対して人間形成を積んだ禅者は、五欲七情を単に制御できると云うことではなく、その時その時の状況の中で五欲七情を大いに働かせて人生を味わっているのです。孔子の仰る「己の欲するところに従って則を超えず」であり、欲するところが妥当な範囲に収まっているのですが、それでいてけぶらいも我慢することもないのです。如是法三昧の所作のしからしむるところです。
 それでも知らず知らず有害な防腐剤とか残留農薬の摂取もあったり、行事が連続する中で睡眠不足になって体調不良になることもあります。また当然加齢現象であちこちの体の機関が加齢と共に機能不全になってきます。それらに対して直ちに最善の方策を立て実践できるのも、五蘊皆空を実践できている禅者には当たり前のことです。
 健康管理や医療行為はサイエンスであり相対樹の領域のことですが、スピリッツの絶対樹で三昧が身に付いてくると純粋に相対樹のサイエンスに身を委ねることが出来るのです。言い換えると人としてサイエンスを最も有効に働かせることができるのは、スピリッツ(三昧)がしっかりしていないとできないのです。
 これが副題の「インテリジェンスが長寿もたらす」に繋がるのです。ここでのインテリジェンスに込められた意味は、単なる知性ではなく感性も併せ持つ人間のポテンシャルであり、肉体の自然を最大限に生かす安定した精神とサイエンスの知性を最大限に発揮させる見識を併せ持つ人間形成のすりあがった教養とでもいうものです。
 古来から禅者は長寿であると云われる所以は、人間形成の禅によって感性と知性を相互作用させて醸成したインテリジェンスを豊かに備え身に付けているからであり、長寿はその証左であると考える次第です。

 

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