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2019.10.29 Tuesday

「正常化バイアス」考

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「正常化バイアス」考

丸川春潭

 正常化バイアス(Normalcy bias)と云う言葉を最近よく聞きます。

 Wikipediaで調べますと、社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。

 人間の心は、予期せぬ出来事に対して、ある程度「鈍感」にできている。

 日々の生活の中で生じる予期せぬ変化や新しい事象に、心が過剰に反応して疲弊しないために必要なはたらきで、ある程度の限界までは、正常の範囲として処理する心のメカニズムが備わっていると考えられる。

 台風15号、台風19号、その直後の秋の大雨で多くの方がお亡くなりになってしまいました。先ずは被災された方々にお悔やみ申し上げます。

 これらの災害の中で、表題の「正常化バイアス」がしばしば使われていました。それは今までも大雨が何回もあり、警報にも何回も接してきたが特に大きな災害にならなかったので、今回も大丈夫だろうと考え、避難が遅れて大事故に遭遇してしまうということのようです。

 ここでの正常化バイアスは悪い方に行ってしまった事例ですが、正常化バイアスというものは本来人間に備わっている本能であり、それ自体は悪いものでも良いものでもないものです。

 こういう本能が人間に本来あると云うことを最近になったはじめて知り、そして興味を感じたので少し考えてみたいと思います。

 

 「正常化バイアス」は一言で云えば、上記の定義にもありましたが、鈍感力と云っても良いのではないかと思います。

 災害の時には、これが裏目に出て悪く作用するのですが、「生活の中で生じる予期せぬ変化や新しい事象に、心が過剰に反応」しないということは、特に精神的ストレスの過剰な現代においては、現代人が正常に生き延びるための必要な本能のはたらきにもなるのです。

 更に小生が興味を感じたのは、人間形成や禅の悟りが、この「正常化バイアス」すなわち鈍感力と関連があるように思われるからです。

 人間形成とは三昧を身に付けることでありますが、三昧が身に付けばここで云うところの鈍感力が強くなると思います。

 本能として備わっている正常化バイアスが、修練によって強化されると鈍感力が段々と強くなってくるのです。そうなるとちょっとやそっとの予期せぬことが身に降りかかっても全く動揺することが無く、それを平然と受け止められるようになってくる。

 なぜならば三昧が身に付いてくると云うことは、自分の中に仏がいつもしっかり生きていると云うことになるから、深い自信が揺るがないということで、外からの外乱で動揺することがなくなるのです。

 こうなると鈍感力という表現ではなく不動心あるいは不動力というべきでしょう。しかも三昧が付いた不動力は、いざというときの瞬発力も同時に強化されます。

 すなわち三昧が付くと云うことは、常に生き生きとした禅機(瞬発力)が横溢することになります。

 本能的な正常化バイアスを基盤にして、後天的な修練により、この正常化バイアスは、不動力と瞬発力の両方を兼ね備えた人間力に発展すると考えられます。

 すなわち何もないところに人間形成されるということではなく、基盤がもともとあった上に修練で人間形成が構築されるのです。

 如何でしょうか? 

 

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