社会人のための坐禅(座禅)道場【人間禅】

 

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2020.05.19 Tuesday

時間が盗まれる?!

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時間が盗まれる?!

丸川春潭

 5月16日(土)読売新聞編集手帳に、次のような面白くて深い記事が載っていました。

 「ドイツの児童文学者エンデの童話『モモ』に時間を盗む男達が出てくる。「時間を貯蓄すれば命が倍になる」と偽り、人々は時間を預けてしまうのだ。◆理髪店の主人がはたと気づく。客との会話をやめ、急いで仕事を済ませるようにしたところ、ちっとも楽しくないことに。たわいもないおしゃべりの時間が仕事を豊かにしていたのを自覚するのだが、今これに似た喪失感を抱くのは理髪店業の方々ばかりではあるまい。◆コロナ対策で抑制を求められる生活習慣の一つに、おしゃべりがある。複数で話すときはマスクを着け、距離を空けましょうと。◆恐らく、そこまでして語らっても以前の心地はないだろう。最近、感染症の拡大以前に製作されたテレビドラマを見てドキッとすることがある。オフィス、居酒屋、公園・・どんな場所であろうと、登場人物等が顔を寄せて会話する場面にいちいち胸がざわつく。◆今の我慢が本来めざすべきは、楽しくおしゃべりのできる「3密」に戻ることなのに、忌むべきもののように錯覚している。おかしい。ウイルスに豊かな時間を盗まれてしまったからだろう。」

 これを読んだ最初は、時宜を得た面白い切り口だくらいな感じでしたが、その内にだんだん人間の本質に迫る深い話ではないかと何回か読み直しました。「客との会話をやめ、急いで仕事を済ませるようにしたところ、ちっとも楽しくないことに気づき、たわいもないおしゃべりの時間が仕事を豊かにしていた」の下りです。

 われわれ人間形成の禅の会において、またその傘下の支部や禅会において、“楽しく”とか“仲よく”ありたいと思っているのですが、なかなかそれが難しいと最近思っています。その難しさに対するヒントが、この理髪店主の感覚を大事にすることにあるのではないかとふと思った次第です。

 耕雲庵英山老師は、この支部は団結心があり仲が良い!と小生に説明されたことがありました。磨甎庵劫石老師は、この支部は冷啾々として冷たい支部だと眉をひそめ嘆かれたことがありました。小生は、担当する支部や禅会において、新到者が来たときに自分もこの仲間に入りたいと思うような雰囲気を持つ支部や禅会づくりをしようではなかと最近よく話しています。ここで肝心なことはそこに入れば楽しい仲間の一員になれると感じられるかどうかです。

 この“楽しい”が問題ですが、立教の主旨の「正しく・楽しく・仲の良い」の深い法理を含んだ「楽しい」ということと直結してしまうと冷啾々に陥る危険があります。理髪屋としての仕事は時間が掛かったとしても、たわいのない会話によって生まれてくる“仕事の時間を豊かにする”観点で、“楽しさ”を考えてみる必要がありそうです。

 耕雲庵英山老師は、摂心会の円了後には必ず酒宴を持たれていましたが、まさにたわいもない会話の類いでしょうが、老師はこのたわいもないことを大切にされ、時には裸になってひょっとこ踊りもされました。今から思うとそのたわいなき踊りに寒毛卓竪(かんもうたくじゅ:恐ろしさにぞっとするの意)です。

 最近の若者は、ゴルフも麻雀も一杯飲みもパスだそうです。しかし、スマホでの人との繋がりには敏感であり、精神的孤独に怯えているのが実態であると社会学者は分析しています。それは人との繋がりの中での自己認証を求めているのかも知れません。スマホの会話の内容にしてもまさに“たわいもない会話”でしかないのです。それでも自己認証になっているのかも知れません。

 小生が新到者として岡山支部の摂心会や座禅会に参加していたころの岡山支部にはその後十年くらいでお師家さんになるような方3名を含め、味のある旧参の方が何人か居られました。これは後から考えて有り難かったのかと思います。最近の支部や禅会の中には、修行歴10年以内の修行歴の浅い人だけしかいない支部や禅会がかなりありますが、そういう所は師家が何かと出向いていって、難しい話ではなく世間的な会話をすることも支部づくり・禅会づくりには必要なのかも知れません。

 たわいのないお客さんとの会話によって、仕事の時間が豊かになる観点は、支部づくりだけに留まらず、人間が社会で過ごす一生における意味を示唆してもいると考えます。難しく法理的に云いますと、楽しさとは自己に合掌することであり、仲よくとはお互いに合掌することであります。たわいもなき会話の根底にはやはりお互いを認め合いまた認められた自分の存在を認識するということが、無意識に流れているのでしょう。だから豊かな時間を感ずることができるのです。人間社会にしても家庭にしても効率だけではなく無駄やたわいもないものがなければ面白くも可笑しくもないのでありましょう。

 最初に掲げた編集手帳の締めくくりは、「おかしい。ウイルスに豊かな時間を盗まれてしまったからだろう。」でしたが、人ごとではない!我々人間禅の活動において、また一回しかない自分の人生において、「豊かな時間」を他に盗まれたり、自分で粗末にして亡くしたりすることがあっては、これは申し訳ないことです。ご用心!ご用心! 合掌

 

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