座禅と徒然(つれづれ)(2)〜〜座禅時の足の痛さ〜〜
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座禅と 徒然 (2)
〜〜座禅時の足の痛さ〜〜
丸川春潭
大学1年生の秋に岡山で耕雲庵英山老師に入門しました。大学に入ると同時にサッカー部に入り、ひたすら走らされたりして太腿はまさに乗馬ズボンのように太く、普通の海水パンツが腿のところで入りにくいような有様でした。足が太いだけでは無いのでしょうが、座禅時の足の痛さは人並み以上だと自覚し自ら慰めてもいましたが、爾来少なくとも15年くらいは座禅の最大の苦痛は足の痛さでした。両足を上げて組む結跏趺坐は足が上がらなくて最初から無理であり、片足だけを上げる半跏趺坐しかしていなかったので、楽なはずなのですが兎に角摂心会の提唱の時を中心に坐禅をする度に痛かったのです。
尻に敷く座布団の厚さを色々変えるとか、足の組み方を少しずつ変えてみたり、いろいろやりましたが痛さは変わりませんでした。岡山の大先輩方は、涼しい顔して皆坐っておられたし、どうしたら痛さを回避できるかと問うても、しばらくしたら慣れていたくなくなるものだと云って取り合ってくれませんでした。
岡山から始まって、耕雲庵老師の道中侍者として、鎮西支部とか熊本支部へも行き摂心会にも参加しました。また本部(市川)道場での学生摂心会などにも出るようになり、同じ年代の道友と懇意になっていろいろ話していると、みんな足の痛さには苦労しているようでした。ただ少し違って感じたのは、中央支部の若い連中は我慢をすることを徹底してたたき込まれていたようで、小生のように年配の修行歴のある方ばかりの中国支部(岡山)に、珍しく入って来た新到の若者であった小生は、座禅中に足を替えることを優しく認められていましたし、小生自身も開き直って足が痛いのを我慢して坐っていても数息観の工夫も公案の工夫もできないので、スパッと足を組み替え、工夫することに集中するんだと考え、一炷香(約45分間)の間に、3,4回も足を替えて涼しい顔して坐っていました。それに対して、中央支部の同年代の道友(佐瀬巨巌、金井古鏡、岸本粛然、柳田絲禽)からは、よく笑われていました。しかしよく見ると、例えば佐瀬家の長男の佐瀬巨巌(小生と同じ歳)は小柄で足が短く太かったのですが、半跏の上げた足を下に外してうまいこと袴で隠しながら坐って足を替えることなく坐っていました。みんな足を組み替えると云うことをしないでも済むように足の痛さに対していろいろ工夫していたのです。
しかし、事生ぜり!小生が座禅中に足をしばしば組み替えると云うことがしばらくして磨甎庵劫石老師の耳に入ってしまったようです。若い者数人で老師のお宅にお邪魔したときにしっかり絞られました。足が痛いのは座り方が足りないからだ!三炷香くらいぶっ続けて坐ったら後は全く痛くはならない!と。老師は長身で痩身で足が長く細いから手を使わなくても結跏趺坐ができるようなお人でしたから、小生に云わせたらこの足の苦痛は判らないのだと肚で思いつつ、平身低頭で退散して帰りました。
20代から30代に掛けて、坐禅はしたいが足の痛さで苦労していた小生は、坐相以外の対策として、食べ盛りの時代に常にダイエットを日常の生活の中で工夫していました。満腹感を満たすために味噌汁などの汁物を最初に沢山取って炭水化物をできるだけ減らすなど現在に到るまで、60年間足痛対策としてのダイエットが健康維持に期せずして貢献してきているのは確かでしょう。
31才の時にそれまでの和歌山から茨城県にある住金の新しい鹿島製鉄所に転勤になり、その当時の最寄りの支部である房総支部へ阪神支部から移籍をしました。それから数年経ってからのことですが、若い新到の平山芳華禅子の坐相をみて驚きました。結跏趺坐を綺麗に坐っているのです。結跏趺坐で両足を膝に上げているのですが、平ったく無理のない自然な坐相に引きつけられました。見よう見まねでいろいろ工夫する中で、一旦きちっと結跏趺坐をして、そのあと前後左右に体を揺らせる(揺身する)と両足が跳ね上がるような結跏趺坐が崩れて足首が太腿から少しズレ落ちて安定して止まるところがあり、芳華さんのような綺麗な結跏では無いのですが、太い足なりに坐相が平たくなりほとんど痛くない自分なりの自然な坐相が出来上がりました。この坐相に馴れこの形が固まってくると、二炷香ぶっ続け(90分)で坐っても大丈夫になりました。30代後半だったと思います。爾来30年近くこの結跏趺坐崩しの自分流の坐相で通しました。これでこのお話しが終わりだと格好が良いのですが、まだ落ちがあります。30年近くと云うことは、60数才であり、15年ほど前になります。60代前半に左足が階段の上がり下りで痛くなり、整形外科に行ってレントゲンで見ると膝の関節の一部が黒ずんでおりました。医師曰わく膝に無理なテンションが掛かり続けて骨の一部がスカスカになっていると。貴方の職業は何ですか?と。
結跏趺坐では右足を左足の腿に乗せた後すなわち右足首で左足の腿を押さえたまま左足の膝から下を右足に捻るように乗せるのですが、この最後の所で左膝の関節にかなりなテンションが架かるのです。日に何回かを30年続けて経年疲労したようです。それからはまさにドクターストップにより結跏趺坐は止めて、右足を上げるだけの半跏趺坐にしました。60才を超えてからは足も細くなったためか、朝夜の坐禅では足痛を忘れて坐っています。
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