那須の雲岩寺訪問

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那須の雲岩寺訪問

杉山呼龍

 

 那須の雲岩寺に行った。今、芭蕉の研究をしている。研究には現地調査が不可欠である。芭蕉の研究は、なにせ三百年以上の歴史がある。その研究史を調べただけだって一冊の本ができる。しかし、まだ解ってないことも多い。神田川のそばに関口芭蕉庵がある。深川の芭蕉庵の前に住んでいたといわれる。その関口芭蕉庵について書かれている伝記は殆んどない。彼が亡くなったのは1694年、元禄七年だ。芭蕉は「奥の細道」の旅の途中で雲岩寺を訪れている。彼の師匠である仏頂和尚が修行し、亡くなった寺であるからだ。その雲岩寺へは、新幹線の那須塩原の駅からバスで1時間、田舎道を通って幽邃な山奥に入る。行く人はたいてい車であり、寺の入り口には2,3台の車が駐車していた。そこに清らかな川が流れていて、その川に朱塗りの橋が掛かっている。渡ると長い石段を登る。途中門があり、門の右側に「碧巌録提唱」という看板が掛かっている。とても古くて字がかすれている。階段を登り切って更に奥に入ると、建物があって「受付け」と書いてある。中に入ってみると誰も居なくて、そこには参禅の時に使うような喚鐘が置いてあった。そばに説明書きがある。

 

 「御朱印をほしい方は喚鐘を叩かないで下さい。用事のある方は喚鐘を叩いてください」。

 

 ご住職に聞きたいことがあり、可能ならば面会をお願いしたいと思っていたので、喚鐘を2回叩いた。返事がないのでまた2回叩いた。それでも返事がないので5、6分位散歩して、こんどは力まかせに2回叩いた。それでも全く返事がない。不満だったが仕方なく諦めてその辺を少し散策して、先ほど登った石段を下りた。途中観光客を2,3人見かけたが、雲水に逢うことはなかった。帰りのバスに乗った。バスの運転手は地元の人であったので、この寺に雲水は何人いるのか聞いてみた。そしたら一人だという。この山奥の広いお寺に老師と雲水一人。どうりで喚鐘を叩いても返事がないわけだ。そういえば、駅に置いてあったパンフレットに雲岩寺が載っていたが、その電話番号が線で消されていた。雲水一人では電話の対応もできないのだろう。雲水が一人とは驚いた。雲岩寺は12世紀、平安時代創建の妙心寺派の古刹である。雲水は掛塔自由であるので、明日どこかに行ってしまうことだってある。この広大な寺の作務はどうなるのだろう。寺の経営はどうなるだろう、人ごとながら心配になった。

 

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