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2015.01.05 Monday

一休さんの新年おめでとう

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一休さんの新年おめでとう

丸川春潭

 一休さんこと一休宗純禅師は、臨済宗華叟宗曇の嗣法者でありますが、臨済宗の師家としては相当変わった方で有名であります。

 一休さんの数ある逸話の中のひとつに、正月元旦の朝、京都の町に出かけて髑髏(人間のしゃれこうべ)を竹の先に刺して「このとおり このとおり」と云いまた、「ご用心 ご用心」と呼びかけて歩いたという逸話が有名です。

 「にくげなきこのしゃれこうべあなかしこ 目出たくかしくこれよりはなし」

 「門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」

 

 この振る舞いをどう解釈するかはなかなか難解であり、古来から多くの識者がいろいろな評論をしています。

 「正月だと浮かれていても、この髑髏のように直ぐなるということを知らしめるために。」「目先の享楽にふけっている人を戒めるために。」「髑髏を見ることで、楽しく生きている時こそ「死」を思い、生きていることを深く実感しなさいという警告である。」等々。

 

 一休禅師のこの正月元旦の奇行を正しく理解するには、もう少し一休禅師の思想のバックグラウンドを点検しておく必要があります。それに格好な文献が一休禅師法語集にあり、その一節に「髑髏」というタイトルの散文があります。

 

 これは、禅の悟りを骸骨に託して述べられており、これが書かれたのは4月8日であり、釈尊降誕会を祝うために書かれたものと考えられます。その一部を次に引用します。

 「・・・常にあひともなひける骸骨、世をすて法を求むる心ありて、あまたのわかちを尋ね、浅きより深きに入りて、我がこころにみなもとをあきらむるに、耳にみてるものは松風の音、まなこにさえぎるものは、桂月のまくらにのこる。 そもそもいづれの時か夢のうちにあらざる。いづれの人か骸骨にあらざるべき。それを五色の皮につつみてもてあつかふほどこそ、男女の色もあれ。いきたへ身の皮破れぬれば、その色もなし上下のすがたもわかず。ただ今かしつきもてあそぶ、皮の下に、此の骸骨をつつみて、うちたつとおもひて、この念をよくこうしんすべし。 尊きも賤きも、老いたるも、わかきも、更にかはりなし。ただ一大事因縁を悟るときは、不生不滅の理を知るなり。・・・」

 「くもりなきひとつの月をもちながら うきよのやみにもよひぬるかな」

 「はじめなくをはりもなきに我が心 うまれ死するとおもうべからず」

 

 一休法語集の「髑髏」で述べられている骸骨は、妄想雑念の贅肉が脱落し、不生不滅の如是法を体得した人間の境涯と考えるべきです。すなわち此の骸骨は、生きていた人間が死んだ形としての骸骨ではなく、生きているままで煩悩妄想を空じ切った人間の象徴として、老若男女貴賤を問わない普遍的な形としての骨であり最も自由闊達な、そういう骸骨であります。

 この骸骨の境涯を手に入れることができたら、それこそが本当におめでたいことであり、新しい年を本当に祝うことができるというものです。

 こういう一休禅師の骸骨観を踏まえて、正月元旦の奇行を読まなければならないと思います。

 

 更にその意味することとは別に、一休さんの取った行動についてもしっかり見ておかねばならないと思います。

 すなわち一休禅師の取った行動は、単なる道徳的な警告のためではなく、禅の生粋を嗣法した師家として、何とか迷える衆生に生死を超えた如是法を悟らせたいとの熱い菩提心からの行為であると見て取らねばならないのではないでしょうか。

 そして正月元旦に骸骨を突きつけてという行為は、やむにやまれぬという気持ちとともに、その迫り方はまさに鬼気迫るものがほとばしり出ています。

 

 「来るものは拒まず去る者は追わず」とか「縁なき衆生は度し難し」で、自分一人が安閑としている宗教人に対して、一休禅師は痛棒を与えているのであります。縁なき衆生にはむしゃぶりついて体を揺すってでも、縁を付けようとしているのです。

 正月早々の、馬鹿にされそうなその行為が、ほとんど無駄骨折りになることは百も承知で、しかしやらずんば居られない熱い菩提心に対して合掌するのみです。

 新年に当たり、我が人間禅の法統の大先達である一休禅師の「祝い方」を範として、決意を新たにするものであります。

 本年もご指導、ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。合掌

 

文献:「一休禅師法語集」文陽堂書店

  :「風狂子一休」小野嘉夫著 文一出版

 

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