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2020.09.09 Wednesday

続「AI時代と禅」〜〜自分らしさを出せ!〜〜

 

続「AI時代と禅」

〜〜自分らしさを出せ!〜〜

丸川春潭

 スポーツの世界では試合の結果を左右する”心理学"の研究が進んでいるようです。必ず勝つ人と負ける人が存在するスポーツの世界においては、同じ様な技術・能力を持った選手同士の勝敗を別ける要素として「心」が大きく関わっていることが関係者に認識され、勝つための「心」を追求し始めたということです。
 スポーツ心理学を踏まえてのアスリートを一流にする一流の指導者のキーワードがサブタイトルの「自分らしさを出せ!」と云うことのようです。この自分らしさは、単に「人と違ったことをすることではない」のは勿論です。しかし、ではどうしたら自分らしさを出すことができるのかということについての明確な応えは、まだスポーツ心理学の方でも出てきていないようです。
 スポーツにおける必勝のための「心」追求は、ビジネスの世界でも全く同じことがテーマになっており、書店のビジネスコーナーでは、このテーマに関わらない本はないくらいにいろいろな角度から論ぜられています。
 人間禅としても社会的ニーズに応えると云うことから企業研修を通じて社会貢献をしようと三年前から進めてきているところです。したがって我々もまさにこの「心」追求から「自分らしさを出す」ことを企業研修の中心に据えることになります。
 「自分らしさの追求」は、今に始まったことではなく小生が製鉄会社の管理職だった1980年頃からも既にビジネスマンにとっての最大の課題が個性の発揮でした。すなわち40年以上に亘って継続したテーマであるばかりでなく、今後間違いなく到来してくるAI時代においてますますこの課題がビジネスマンのみならず全ての人に共通する課題となると考えます。
 「自分らしさは、人と違ったことをすることではない。」に対して、先にも述べた40年間売られ読まれた膨大なビジネス書は様々に回答しているのですが、小生は全部枝葉末節の回答でしかないと見ておりました。すなわち自分らしさが相対的に他人と比較しての自分らしさの域を脱していないということと自分らしさを発揮させる術がまさに手先の術でしかないのです。
 これからの将来を考えると、今までの延長線ではない時代すなわち人工知能(AI)時代が想定されます。AI時代のサラリーマンは今以上に「自分らしさ」が求められるのは間違いありません。もっと厳しく求められて来るでしょう。それは「人と違ったことをするのではない」だけでなく、更に「AIと同じことをすることではない」に自分らしさが発展してくるからです。AIがDeep learningのできる時代における「自分らしさ」は、「AIと違ったことをすることではない」だけではなく、もっと「人間らしさの範疇」の中での自分らしさが求められてくるのです。AIの出現によって「人間らしさの範疇」が浮かび上がり、その価値が際立つことになるのです。
 臨済禅の特徴は、お釈迦様の悟りを現代人にしっかり追体験させる方法を伝えてきているところにあります。お釈迦様の悟りの原点は、生きている自分の中に永遠の命とも云える絶対の自己をしっかり悟るところにあります。他人との比較(相対的)でない絶対的な自己のCharacter(個性)を発揮するためにはこの絶対の自己(本当の自分)を先ずもってしっかり掴む必要があります。これは人間らしさの範疇にのみ存在し、これをしっかり自覚することが自分らしさを出す必要条件になるのです。
 この必要条件に対して十分条件も必要です。変化の激しいそして多様性のある現代社会において自分らしさ(個性)を発揮する十分条件は、掴んだ悟りを日常生活の中で常に生き生きとさせ続けることです。これはなかなか難しい。本当の自分(主人公)をしっかり掴むと云うことは臨済禅の正脈の師家に師事することができれば、それほど難しいことではない。しかしその悟りの境地を社会活動の中で持続することは難しいのです。脱俗出家して喧噪の世縁と断絶した山奥の僧堂で静かに修行専一に生活できる修行僧であれば未だしも、生き馬の目を抜く十字街頭のまっただ中での社会生活において、この悟りの境地すなわち自己の主人公を常に目覚めさせておくことは至難の業なのです。しかしこれが在家禅の意義深さであり真骨頂がここにあるのです。主人公を常に目覚めさせるのに先人は非常な努力を払い様々なやり方を編み出してこられました。そのための一つの先人の教示が、「一日一炷香」(毎日線香一本が燃え尽きるまでの30〜50分間 座禅を組んで数息観三昧に打ち込む行)の実践です。数息観三昧に打ち込むことによって、毎日主人公を呼び起すのです。この主人公は知性の領域にはいません。すなわち知性を司る頭脳(頭頂葉)の中の記憶には主人公は存在していません。したがって見性し悟りを掴んだとしてもそれを知識的に記憶して保持することは出来ないのです。悟りの居場所は感性を司る前頭葉であり、前頭葉が座禅行によって活性になっているときだけ、お釈迦様の悟りが活性になって出て来るのです。座禅行によって前頭葉が活性になると悟りの境地が蘇えり自己の主人公は生き生きとしてくるのです。
 この必要条件(主人公を掴むこと)と十分条件(主人公を目覚めさせておくこと)が揃って初めてその人の自分らしさ(個性)が発露されるのです。自分らしさはコチッとしたものではなく、環境の変化に応じて柔軟にそして鮮やかに発揮されるものです。どんな天賦の質に恵まれていてもこの二つの条件が揃わなかったら自分らしさを発揮することは出来ません。普通の平均的な人間でも、臨済禅の人間形成育成システムに則って努力すれば、それぞれの器に応じた自分らしさを開花させ一生一回しかない人生を目一杯生ききることができるのです。
 勝つためのスポーツ心理学も本当に実効を上げるためには、表現はどうであれ既述の必要条件・十分条件を揃えなければ一流にはなれない。何らかの方法に則ってそれに近づいて行く実践行を確立しなければならないのです。
 日本において一流のトップアスリートのメンタル(心)を強くするには来年の東京オリンピックは絶好のチャンスと考えます。勝つための心を養成する施策を国の施策として取り上げ実施すれば良いと考えます。一度そういう施策をして実効が確認できれば、永続的な施策にもなるというものでしょう。
 スポーツのみならず最も自分らしさ・個性の発揮を望んでいるのは、国際競争で戦っている企業経営者でしょう。前述の禅的企業研修が日本の国際競争力を付けるためにますます必要になってきていると考えます。自分らしさの発揮は新入社員から社長までに必要であり、それぞれの研修コンテンツを臨済禅の教育システムに則って工夫し作り込まなければなりません。このノウハウは臨済の法を継ぐ在家禅である人間禅に蓄積され集約されており、それをしかるべきパートナーと把手供行して社会に還元していくことが時代の要求であると考えています。これが有力な企業で実効を上げれば、社会のあらゆるポジションでこの自分らしさ発揮の教育システムは自然に浸透して行くことになるでしょう。これこそが明日の日本の国づくりに繋がると思います。

 

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