老師ブログ

人間禅の老師による禅の境涯からの便りです。
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2019.01.30 Wednesday

人生100年時代と人間形成 ――老人の社会貢献――

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人生100年時代と人間形成

――老人の社会貢献――

丸川春潭

 日本人の平均寿命は、昨年で男性が81歳超、女性が87歳超になり、しかも毎年平均寿命が記録を更新して延びており、人生100年時代の到来も現実味のある話になってきております。一生一回しかない人生が長くなると云うことについて、社会的には色々新たな課題もあるようですが、大変結構なことです。

 仕事に於ける定年が寿命の伸びに従って延長するかと考えると、官公庁を筆頭に社会の動きが遅いのが現状です。したがって必然的に定年してからの長い年月を人生の中でどう位置づけどう過ごすかがより大きな問題になって参ります。お金を稼ぐ期間と稼いだお金を消費する期間という皮相な捉え方ではなく、一生一回しかない人生を如何に充実しそして社会に貢献する質の高い生きがいをどう設計するかは誰でもの共通する重大な課題であります。しかもこの問題は定年になった人は勿論のこと、未だ現役の間にこそこの人生設計をしっかり描くことが必要だと考えます。

 この重大な問題を考える上で留意しなければならない観点を「人間形成の禅」の立場から見ておきたいと思い、擇木道場のホームページに嘗て3回連載で掲載したブログ「路遙かにして馬の力を知る」の二つを引用します。

 人間禅の創始者耕雲庵英山老師が喜寿の時に小生は「路遙知馬力歳久識人心」(路遙かにして馬の力を知り、歳久しくして人の心を識る)という漢詩の書を拝受し、今 目の前に掛け軸として掛かっています。拝受した時期は、小生が20代の後半で50年前のことです。耕雲庵老師は喜寿以降の晩年にこの詩をよく書かれているようです。

 頂いてから50年近く経過した最近になってからこの詩が非常に近しい感じに思えてしばしば床に掛けるようになりました。振り返ってみれば、まさに老大師がこの書を書かれた年に自分がなってはじめてその示唆するところが噛みしめられるようになったということに最近気がつきました。

 上の句の意味は、近いところでは徒歩で行っても大したことはないが、数十キロにもなると馬に乗って行く有り難さが初めて判りだすというくらいな意味であり、下の句もその調子に乗って年を重ねるほどに人の心がよく判るようになったというのです。当然この詩の作者も下の句が云いたいが為に、その比喩形容として上の句を持ってきたと考えるべきでしょう。

 最近この軸に惹かれるのも、当然ながら下の句の「歳久しくして人の心を識る」であり、それが何を意味しているかが若い頃には判らなかったということもこの下の句に対してです。

 耕雲庵老師は30才前半で師家分上になられるという五百年間出の英才であり、この詩を書かれ出した喜寿までに師家の任に付かれている年数が40年以上になるという大宗匠です。こういう耕雲庵英山老師が、「歳久しくして人の心を識る」を書かれる。小生のような凡才とは月にスッポンというか高嶺の月を仰ぎ見るようなお方でも、この年になって初めて識ることがお有りであったということであります。すなわち老大師のような若い頃からできあがったような方も未だこの年で境涯が進んでいるということなのです。そのように小生は拝察し感動するのであります。(その1)

 ここではどう判ったのか?そしてどうして感動しているのかについてですが、小生は今年3月30日の誕生日で満79才になります。人間禅に入門したのが19歳の時でしたから修行歴満60年ということになります。そして歴代の総裁の提唱を聞いて異口同音におっしゃっていた言葉が「一日一炷香を実践するように!」でした。すなわち365日×60年=約20000炷香+摂心会(1000回)と途方もなく座禅をやり数息観をやってきたのですが、最近も著しく三昧が深まったと自覚しています。すなわち未だに日進月歩で進化している感触があるのです。すなわち年を取れば取るにつれて留まることなく人間形成は進化するという実感です。

 耕雲庵老師が「路遙知馬力歳久識人心」を書かれた頃と小生もほぼ同じ年齢ですが、師家の在任期間は40数年と14年で雲泥の差で比肩するのもおこがましいことですし、その人間形成のレベルは言うに及ばずですが、そういうことではなく同じことは、年を取ってもさらに進化するという実感の共有であります。その証左が、まさに「路遙知馬力歳久識人心」(路遙かにして馬の力を知り、歳久しくして人の心を識る)なのです。今、目の前の床に掛かっている掛け軸です。

 現代は人生100歳時代です。更に寿命は伸びるでしょうが、死ぬまで進化し続け、より深く人の心を識りたいものであります。(その2)

 以上拙いブログをそのまま掲載しましたが、このタイトル「人生100年時代と人間形成」で留意したい観点は、人間の肉体は水泳競技とか卓球競技とかにおいてのピークは20歳くらいであり、一番長い野球でもせいぜい現役は50歳までですが、人間の精神的成長は取り組みようによって異なりますが死ぬまで成長し続けられるものであるという観点であります。すなわち寿命が伸びれば伸びるほど、個人の精神性の成長は当然より深く高くなり得るし、引いては人類の精神文化は寿命と共に同じく発展すると考えられます。

 したがって人生設計においても、肉体を使っての社会貢献時代と年齢を重ねるにつれて練られた人間形成のポテンシャルでもって若い次世代の人間形成に資する働きが使命となってくると考えるべきであろう。

 

2019.01.20 Sunday

路遙かにして馬の力を知る(その3)

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路遙かにして馬の力を知る(その3)

丸川春潭

 人間禅の創始者耕雲庵英山老師の揮毫された「路遙知馬力歳久識人心」(路遙かにしてその力を知り、歳久しくして人の心を識る)を拝見しながら、まことにその通りだとしみじみ噛みしめていることを二回のブログで書きました。

 もうこのタイトルでは終わりかなと思っていましたが、岡山禅会と豊橋禅会の摂心会をしている中で、もう少し書き残しておきたいと云う思いが湧いてきましたので(その3)を書きます。

 80歳近くになっても一日一炷香が日進月歩で深まる感覚が、そのまま学人との商量(参禅時のやり取り)にも変化をもたらせ、また公案の見方もまさに数息観の深化に比例して深く見られるようになって来ていることに気付いたのです。

 かって自分が透過した公案が浅い見方であったと云うことが判る。そういう公案が次々に学人の参禅を受けながら見えてくる。公案の見解と云うものは、文字で表現できるようなリジッドなものではないのです。世に公案回答集なるものも出回っていますが、公案に対する答えを知っても何の役にも立ちません。公案に対する人間の境涯が浅ければ浅くしか見えないし、三昧が深くなり境涯が深まれば公案は深く見えてくるものなのです。

 すなわち何歳になっても公案を日進月歩で深めてゆくのが人間形成の禅(人間禅)の真骨頂であり、この柔軟且つ新取の気風こそが将来にわたって我々の誓願が進展していく必須条件であると認識を深くしています。

 新到者の方には今日のブログは、東京から富士山をチラッと遠望するような話になったのではないかと思いますが、この事の修行というものは死ぬまでの壮大な大事業であり、人間に生まれて来た甲斐があったというような素晴らしい人生がこれから先にあるのだということを腹に入れて、100歳時代に希望を持って進んで頂ければ幸甚というものです。(完)

 

2019.01.18 Friday

路遙かにして馬の力を知る(その2)

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路遙かにして馬の力を知る(その2)

丸川春潭

 人間禅の創始者耕雲庵英山老師が喜寿の時に小生は「路遙知馬力歳久識人心」(路遙かにしてその力を知り、歳久しくして人の心を識る)という漢詩の書を拝受し、その意味するところが最近になってようやく判り、感激していると云うことを前回のブログで書きましたが、その続きです。

 ここではどう判ったのか?そしてどうして感動しているのかについてのお話しです。

 小生は今年3月30日の誕生日で満79才になります。人間禅に入門したのが19歳の時でしたから修行歴満60年ということになります。そして歴代の総裁の提唱を聞いて異口同音におっしゃっていた言葉が「一日一炷香を実践するように!」でした。すなわち365日×60年=約20000炷香+摂心会(1000回)と途方もなく座禅をやり数息観をやってきたのですが、最近も著しく三昧が深まったと自覚しています。すなわち未だに日進月歩で進化している感触があるのです。すなわち年を取れば取るにつれて留まることなく人間形成は進化するという実感です。

 耕雲庵老師が「路遙知馬力歳久識人心」を書かれた頃と小生もほぼ同じ年齢ですが、師家の在任期間は40数年と14年で雲泥の差で比肩するのもおこがましいことですし、その人間形成のレベルは言うに及ばずですが、そういうことではなく同じことは、年を取ってもさらに進化するという実感の共有であります。その証左が、まさに「路遙知馬力歳久識人心」(路遙かにして馬の力を知り、歳久しくして人の心を識る)なのです。今、目の前の床に掛かっている掛け軸です。

 現代は人生100歳時代です。更に寿命は伸びるでしょうが、死ぬまで進化し続け、より深く人の心を識りたいものであります。合掌

 

2019.01.15 Tuesday

路遙かにして馬の力を知る

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路遙かにして馬の力を知る

丸川春潭

 人間禅の創始者耕雲庵英山老師が喜寿の時に小生は「路遙知馬力歳久識人心」(路遙かにしてその力を知り、歳久しくして人の心を識る)という漢詩の書を拝受し、今 目の前に掛け軸として掛かっています。

 拝受した時期は、小生が20代の後半で50年前のことです。耕雲庵老師は喜寿以降の晩年にこの詩をよく書かれているようです。

 頂いてから50年近く経過した最近になってからこの詩が非常に近しい感じに思えてしばしば床に掛けるようになりました。振り返ってみれば、まさに老大師がこの書を書かれた年に自分がなってはじめてその示唆するところが噛みしめられるようになったということに最近気がつきました。

 上の句の意味は、近いところでは徒歩で行っても大したことはないが、数十キロにもなると馬に乗って行く有り難さが初めて判りだすというくらいな意味であり、下の句もその調子に乗って年を重ねるほどに人の心がよく判るようになったというのです。当然この詩の作者も下の句が云いたいが為に、その比喩形容として上の句を持ってきたと考えるべきでしょう。

 最近この軸に惹かれるのも、当然ながら下の句の「歳久しくして人の心を識る」であり、それが何を意味しているかが若い頃には判らなかったということもこの下の句に対してです。

 耕雲庵老師は30才前半で師家分上になられるという五百年間出の英才であり、この詩を書かれ出した喜寿までに師家の任に付かれている年数が40年以上になるという大宗匠です。こういう耕雲庵英山老師が、「歳久しくして人の心を識る」を書かれる。小生のような凡才とは月にスッポンというか高嶺の月を仰ぎ見るようなお方でも、この年になって初めて識ることがお有りであったということであります。すなわち老大師のような若い頃からできあがったような方も未だこの年で境涯が進んでいるということなのです。そのように小生は拝察し感動するのであります。(つづく)

 

2019.01.10 Thursday

和気満堂(その2)

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和気満堂(その2)

丸川春潭

 「和気満堂」の(その2)です。

 先の(その1)は、「和気満堂」の難しさは、「正しく・楽しく・仲よく」の最後の「仲よく」の難しさと共通するものがあり、「正しく」「楽しく」がしっかりできていなければ「仲よく」にならないし、また同じように「和気満堂」も実現しない。そして、「仲良く」はお互いに合掌し合うことであり、これが基盤にあれば自ずと他の良いところが大きく見え、他に欠点があっても仕方がないなあと許すことができ、仲良くが現成してくるという観点でした。

 以上は、(その1)の要旨でした。

 ここの(その2)では、和気満堂を阻害する要因として、「自己中心と空気を読めない」を取り上げてみたいと思います。

 自己中心を広義に捉えると(その1)も入ってしまいますが、狭義に見てみてもこれが仲よくの大きな阻害要因になっていると思います。

 自己中の特徴は、他が見えない・他に対する配慮が欠如している点であります。

 禅による初関の透過すなわち見性は自己が大仏(毘盧遮那仏)であることを悟ることであり、一見 自己中心と形は似ているのですが実は全然違います。すなわち自己中の自己はチッポケな自我(エゴ)でしかないのです。見性しても日常において一日一炷香(三昧)が継続されていないと自己の大仏が段々とチッポケなものになってしまいます。これは20年30年修行している旧参の者も十分心しなければならないところです。見性の境涯は最初で死ぬまでのものであり、これを継続できるかどうかが人間形成の修行の最大眼目というものです。

 チッポケな自己中では他に対する配慮が欠如するわけですから、特にリーダーがこの自己中になっているとその組織における仲の良い求心力は消滅してしまいます。リーダーは常に反省に反省を繰り返し、空気を慎重に読まなければいけません。空気を読むと云うことは他を常に意識できているということであり(他を我が面と見れている)、自己中に陥って他が視野から消えてくると、無神経で事務処理的な差配になってしまい、仲良くがその組織で醸成されるはずはありません。

 指導の任にあるものは特に注意しておかねばなりませんが、やはり組織を構成するみんなの他を意識する精神的安定さ(正念相続)がみんなに必要であり、その有無が和気満堂にそのまま反映するのです。(未完)

 

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